事務所紹介-34  『上山寛アトリエ』

上山 寛

  萬代橋下流左岸川岸のマンションの一室を活動拠点に定めてから20年近くが過ぎ去りました。早いものです。マンションからはお気に入りの萬代橋と周辺の風景が望めますが、周辺風景は20年の間に川岸が公園化され高層マンションがいくつか立ち並ぶなどの変化はあったものの大きな変貌はとげてはいません。設計活動のための周辺環境としては徒歩圏内に下町風景もありイマジネーションをかきたてられる申し分ない環境ではないでしょうか。
新潟と言う地で一つ一つの建築をつくり続けていく、やがてそれが大きなうねりとなっていく。どんな小さな住宅でも都市的視点を忘れずに、また都市計画であってもヒューマンな1分の1のディテールを忘れずにとの姿勢で取組んできましたが。今もその考えは変わってはいません。これがどこまで実現できたかどうかは別にしても今後もそうあり続けたいと思っています。
 事務所を開設して一人だけの当初から若干名増えた現在に至るまでオープンデスクの学生も含めれば、かなりの人が事務所での実際の仕事にかかわってもらったことになります。特に学生には現場体験の場になっているのではないでしょうか。今年度の県内大学学生卒業設計コンクール後の懇親会で卒業後に中国の設計事務所に就職が決まったという学生に出会い、新潟からもこのような学生が生まれたかと少々驚いています。現在のグローバル化と就職難の時代を考えれば日本を飛び出す学生が新潟から生まれても不思議ではないのですが。
 今後は新潟からも対岸との交流の中から大陸で設計活動を行うことの可能性も出て来ると思います。現に金沢の建築家のグループが大連に建築設計事務所を開設したという話も聞きます。新潟を拠点として設計活動を行っていても活動範囲を新潟のみに限定するつもりはありませんが、どのような場合であっても新潟人としてのアイデンティティーを持った建築家でありたいと考えています。

 最近の設計活動のなかでコンペやプロポーザルへの取組みもいくつかあります。ほとんどが経験の壁に阻まれて参加出来ないのが大部分ですが、他との恊働によりいくつかの挑戦が実現しています。今後共この挑戦は積極的に行っていきたいと考えています。その場合は1〜2ヶ月間仕事が完全に止まってしまうので進行中の仕事との調整が難しいのですが。これらによりたとえ当選出来なくてもスキルアップをはかりたいと考えています。どんなプロジェクトの場合もヒューマンな1分の1のディテールを忘れずに。