趣味のひろば-36『山に登る。海に潜る』
㈱藤田設計 藤田松夫
趣味はと聞かれて、はて何かなと顧みた。「山に登り、海に潜り、全てを忘却し元気をもらう」ことかなと考え至る。
「山に登る」は、誰しも年を重ねるごとにきつく感じ、特に高山はいつまで登れるかと思う。奥穂高岳 山花
普段は安全の為に山岳会に所属し、指導を受けながら登山を行っているが、特に仲の良い男女5人の仲間と「3000mの会」を結成し、20年程の間連続して、晩夏から早秋の頃、毎年日本アルプスを目指してきた。
私が年長であり、仲間よりウォーミングアップ登山が少ない故に、毎年完登できるか不安である。
いきなり3000m級の山には登れないので、春先から心と体の準備が始まる。
週一回、インストラクターの指導の元に体を動かし、しっかり汗をかくことを習慣として体力を養い、酒は少々控えめにしている。
徐々に体力を高め、低山から何度か登り目標に向け気力、体力を整え、万全のコンディションで当日を迎える。
高山の広大な景色に感嘆し、汗を流し苦労して山頂に立った時の感動は言葉にしがたい。
最近は登るだけでなく、高山植物、野鳥や動物を観察し、食茸を味わい、山岳写真を撮ったりしている。ブロッケン現象話では聞いていたが初めてブロッケン現象(山頂で太陽を背にして霧に向かった時、観測者の影が霧に映り、あたかも後光が差して仏になったかのように見える現象)に遭遇したときには、興奮し夢中でシャッターを切った。
山小屋での夜は、天空に瞬く星を眺め、翌日の準備と体力を養う。
下山後は近場の温泉旅館に宿泊し、疲労困憊の体の汗を流し、疲れを癒す。温泉から上がるやいなや早速乾杯で、辛かった登山も忘れ話弾ませ、すぐに来年はどこに登るかの話が始まるから不思議である。(無事完登し、温泉でさっぱりした後の一杯は、古町で呑む酒とは別の味わいであり、格段においしく楽しく感じる?)
翌日は、観光客のあまり立ち寄らない、名所名跡を探索し、珍しいお土産を求めながら帰宅する。
今年もよく頑張れたと、自分の体を褒めてやり、元気をもらい、又一年仕事を頑張る事ができるぞと思う、積み重ねの人生である。
登山は夏山の高山だけでなく、一年中楽しめる。
春の芽吹きに秋の紅葉、冬も又楽しい。
山間に一年中温泉の湧いている通年山小屋があり、冬山支度をし登頂後、下山の道中でそこを目指す。
危険ではあるが、冬山をよく知っている仲間をリーダーに連れて行ってもらう。
ナナカマド 妙高山キヌガサンソウ
最近は装備品も良くなり、アナログでは地図とコンパスで山頂方向を確認し、赤旗ポールを立てトレース後を付けて歩行する。
デジタルではGPSを使用し、山道での自分の位置を確認しながら移動する。アナログとデジタルを組合せ、登山道を外れないように細心の注意を払う。
万が一の悪天候時にはビバークできるくらいの準備をして冬山登山に挑むのである。
幸いそのような装備を使わざるを得ない状況には遭遇することなく、山の先輩に感謝している。
剣岳山頂
「海に潜る」は、毎年旅行を兼ね、若い頃から好きな山形の海や、笹川流れの透き通ったきれいな海に潜って童心に返り、夏限定の岩牡蠣などの海の幸に舌鼓を打つ事を年中行事にしている。
忙しさだけでは、生き方が解らなくなってしまう、いつまでも想い出作りに生きたい。
趣味から人生を学んでいるようだ。年を重ねてきた所為か、ことさらにそう感じる。