作品紹介-31 岩室観光複合施設計画にあたって」

(有)像設計事務所 中村優晴

【画像クリックで拡大】 岩室は、江戸時代から北国街道の宿場町として、また越後一宮である弥彦神社参拝者の精進落としの遊里として300年余りに渡り栄えてきた歴史ある温泉地であり、また、直江兼継の弟、大国実頼が構えた「天神山城」跡を有する多宝山及び角田山の麓に拡がる豊かな自然と広大な田園地帯を有する地域です。この長い歴史と地域に培われた風土と文化、豊かな田園地帯から生まれた食文化、加工食品、地酒それに加え、ほのぼのとした人情等、地域特有の資源が多くあります。
 一方、岩室には将来の地域のあるべき姿を熱心に検討している地元団体「岩室未来研究会」があります。また、地域と武蔵野美術大学が連携した「岩室アートサイト」が、街づくり活動の一環として動き出しています。この産・学・民一体となった街づくりが始動している中、「岩室観光複合施設計画」は進められました。幾度か大学及び地元との会議及びワークショップで、施設づくりコンセプトを地域の歴史及び風土と文化を活かした「観光情報発信の拠点」及び「地域間交流の拠点」、「地域活性化の拠点」の各機能を複合的に持たせた「地域創造の拠点」として位置づけ、これを基に設計に着手する事になりました。

【配置及びファサード計画】
 配置には、周囲の豊かな自然と多宝山の麓と一体感を図る為、ダイナミックな築山を造り、ファサードは、多宝山及び角田山の峰々と調和をさせ、屋根にムクリをつけ、柔らかな曲線の切妻屋根としました。地域に拡がる自然を楽しみ、更に岩室の歴史及び文化を実感する「岩室の入口的施設」として配慮しました。

【平面計画】
 地域の歴史紹介、施設を使ったイベント、工芸教室及び企画展示の各ゾーンに加え、物産販売、温泉地を表現する足湯ゾーンを、「時間」「期間」「季節」により使い分けし活用する多目的利用に配慮しました。
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【平面イメージ】


 計画は、地元街づくり団体及び武蔵野美術大学との協働を図りながらの作業となりなかなか大変な業務でしたが、設計は完了し、いよいよ今年度、着工となり地域づくりの大きな一歩が始動します。
最後に、基本設計においては、武蔵野美術大学高橋並びに宮島両先生及び学生の皆さんには素晴しい多くの御提案を頂きました。心より感謝致します。また、今後、施設活用にも大きく関わってゆく事になることも併せて報告しておきます。